物件の売り方

  1-3.媒介契約の締結

①専任媒介契約と一般媒介契約

媒介契約とは、物件の販売を依頼する不動産屋さんと売主様との間で交わす契約です。
大きくわけると、2種類の契約が存在します。

・専任媒介契約
・一般媒介契約

まず、不動産屋さんが受け取る報酬について簡単にお話しておきます。
不動産屋さんが最終的に受け取る仲介手数料は、いわゆる成功報酬です。
つまり、契約が成立しない限り、不動産屋さんは一切の報酬を受け取ることができません。

販売を依頼された不動産屋の担当さん、頑張りました。
結果、自分で買主を見つけた場合、売主様と買主様の両方から報酬を受け取ることができます。
これを業界では【両手】と呼び、不動産屋さん的にはいちばんありがたい状況です。

一方で、他の不動産屋さんがお客様を連れてきて売買が成立することもあります。
この場合の報酬は
売主→販売を依頼された不動産屋さん
買主→物件を紹介した不動産屋さん

という形でそれぞれ報酬を支払います。
これを業界では【片手】と呼びます。

これを踏まえて、それぞれの契約についてお話します。

・専任媒介契約

専任媒介契約とは、簡単に言うと【あなただけよ】という契約です。
つまり、販売を依頼する不動産屋さんはひとつだけ、というものです。

専任媒介契約の場合、不動産屋さんのメリットは計り知れません。
自分が買主を見つけてきて売買が成立すれば両手です。
買主が他の不動産さんの紹介だったとしても、少なくとも売主様からは報酬を受け取ることができます。
つまり広告費等のコストを確実に回収することが可能なのです。
なので不動産屋さんは専任での媒介契約を欲しがります。

とりあえず高めの価格で専任媒介契約をもらっておこう。
で、あとで下げてもらえばいいや、なんて業者もあるかもしれません。

しかし一方で、売主様の立場からはどうでしょうか。
「あなただけで大丈夫?」
当然の不安ですよね。
初めて会う人に自分の大切な不動産を預けるんですから。
そんな方のために用意されているものが、次の一般媒介契約です。

・一般媒介契約

一般媒介契約とは、簡単に言えば【誰でもどうぞ】という契約です。
つまり、販売を依頼する不動産屋さんはいくつでも構わない契約です。
とはいえ、実際には多くても三社くらいかと思います。

売主様からすれば安心です。
たくさん頼めば確率が上がるように感じますよね。
しかし不動産屋さんの立場は少々複雑です。

例えばA社、B社、C社の3社に売却を依頼したとします。
A社頑張りました。
チラシもたくさん撒きました。
しかし最終的に決めたのはC社でした。
この場合、どんなに販売のためにコストを掛けたとしても、A社B社は報酬を受け取ることができません。
販売のために掛けたコストを回収できない可能性がある契約、これが一般媒介契約です。
このため業者によっては力の入れ方が変わる可能性があります。
確実にコストを回収できる専任媒介の物件を優先する、という考え方です。
収益性を考えればやむを得ない選択かもしれません。

ちなみにルクハウスのスタンスは、
専任だからと言って特別扱いはしません。
一般だからと言って手を抜くこともしません。
どちらで預かってもお客様の大切な財産であることに違いはありません。
同じように販売活動に力を入れていきます。

以上が専任媒介契約と一般媒介契約の違いです。

②専任、一般、どっちにすべき?

インターネットがなかった時代は、その不動産屋さんが持つ人脈が非常に重要でした。
しかし今の時代、便利になりました。
不動産屋さんが預かった物件は【レインズ】と呼ばれるネットワークに登録されます。
このレインズに登録された物件は、全国全ての不動産屋さんが検索可能です。
つまり今は、お客様にとっての専任媒介契約時のデメリットはほとんどありません。

では売主様にとってどちらの契約が最良か?
これは完全にケースバイケースになります。
しかし、誤解を恐れずに言うなら、お勧めは専任媒介契約です。
査定の際に各不動産屋さんの担当と直接お話する機会があるかと思います。
提示価格にそれほど違いはありません。
(あったとしたら、むしろ怪しいことは先ほどお話しましたよね。)
あとは「こいつなら信頼できる」と思える担当をひとり選んで下さい。
そしてその担当と二人三脚で進めていくのが良いでしょう。
ルクハウスを選んでいただけるなら当然頑張ります。
しかし他の不動産屋さんで信頼できる担当に出会えたなら、その方にすべてお任せしてみましょう。

専任媒介契約を進める理由がもうひとつ。
価格のコントロールがし易いという点です。
このお話は少々ややこしいので、興味のある方だけ2.価格のコントロールでお話します。

ただし、すべての物件が専任媒介契約に向いているわけではありません。
いわゆる【売りにくい物件】というものがあります。
理由はさまざまです。

人気のないエリアである
坪数が少ない
築年数が古い
陽当たりが極端に悪い
地形が悪い
様々な事情から価格を下げることができない
等々。

こういった物件は、一般媒介契約のほうが向いている場合があります。
とにかく露出を多くすることを優先する場合です。
その際不動産屋さんを選ぶポイントは

・地元に強い小さいとこ
・規模が大きく多くのお問い合わせが期待できるとこ
・担当が信頼できるとこ

これらを基準にして三社程選ぶのが良いでしょう。

あと、特殊な場合です。
任意売却(※)等の場合は、必ず専任にして下さい。
任意売却の場合は、債権者や行政等、調整が必要な相手が格段に増えます。
一般にして交渉の窓口が増えてしまうと押えが効きません。
まとまる話もまとまらなくなってしまいます。
大事なことなのでもう一度言います。

任意売却等の場合は、必ず専任にして下さい。

もちろん、ルクハウスは任意売却等のご相談も可能です。

※任意売却
借入金の返済が滞った場合等に出てくる話です。
債権者は債務者の同意なく物件を競売にかけて(抵当権の実行)、貸金を回収する権利があります。
しかし競売になった場合、価格は市場価格に比べて低くなる可能性が高いです。
このため借入金の返済後、売主様の手元にキャッシュが残らない場合が多々あります。
これを回避するために、競売にかかる前に売主様自ら売却をするのが任意売却です。
任意売却を成功させるためには、債権者とのタフな交渉が必須になります。
窓口は絶対ひとつにすべきです。

上記を踏まえて、専任でいくか一般でいくかを決定し、不動産屋さんと媒介契約を締結します。
具体的にご相談いただければ、ルクハウスなりのアドバイスをさせていただきます。

③注意点

ルクハウスを含めて多くの不動産屋さんは、上記媒介契約の内容を詳細に説明した上で売主様の判断を仰ぎます。
しかし中には、媒介契約の説明もないままで【専任媒介契約書】、若しくは【専属専任媒介契約書(※)】を出す業者もいます。
同じ不動産屋さんとして気持ちはわかりますが、見逃せません。
理解したうえで選ぶ専任と、わけもわからず選ばされた専任とでは全く違います。
上記のような話を全く知らない風で不動産屋さんの話を聞いて、どこまで話すかでその担当の信頼度を図るのも手かもしれません。

※専属専任媒介契約
専任媒介契約では、販売を依頼する業者は1社だけです。
このため契約まで至った時に、少なくとも売主様はその業者に報酬を払う義務が発生します。
しかし、【売主が自分で買主を見つけた場合】には、この限りではありません。
つまり、自分で買主を見つけた売主は業者を通さずに契約することが可能です。
仲介手数料を支払わずに済みますね。
対して専属専任媒介契約では、同様の場合でも業者を通すことが義務付けられます。

実務上不動産の契約で一般の方が業者を通さないということはそうそうあり得ません。
そういう意味では両者にそれほど違いはありません。
しかし、それを義務付ける契約をしれっと結ぼうとするとなると、ちょっとどうかなあと考えてしまします。

1-4.売出開始